インターネットユーザーであれば、誰もが一度は、パスワードやIDが分からない「ログイン情報忘れ」に陥ったことがあるのではないでしょうか。
パスワードの再発行や問合せを実行したという人も少なくないでしょう。
ユーザーにとって、思うようにログインできないこと、そのものが大きなストレスです。
せっかく再びサイトを訪れたユーザーを逃さないために、できるだけログインに躓かないように工夫するか、スムーズなパスワードリセットのフローを用意しておきたいものです。
そんな会員登録フォームと切っても切り離せない関係にあるログイン情報忘れ。今回の記事ではその理想的なあり方を考察していきます。
~目次~
パスワードリセットのハードルの高さ
まず最初に、「ログイン情報忘れ」とパスワードリセットが、どのくらいユーザーにストレスを与えているかについて参考になる調査結果を紹介したいと思います。
以前の記事「3億ドルのボタン~45%もの改善効果をもたらした、たったひとつの施策~」でも紹介した内容ですが、
ある大手Eコマースサイトのユーザビリティ調査では、リピート利用のユーザーを対象にした解析で以下のことが判明しました。
ログインの可否
ユーザーの45%がアカウントを複数登録している
45%のユーザーが、既に会員登録したことを忘れたかログイン情報を忘れたたなどの何らかの理由で、同じ情報での会員登録を実施していたようです。なんと多いユーザーでは10個も登録があったようです。
ログイン情報を忘れる以前に、登録したことがあるかどうかすら覚えていないというユーザーは意外と多いのかもしれません。
またパスワードリセットを面倒に感じて再度新規登録を実行したという可能性もあります。
40%がパスワードリセットを送信
認証ページでログイン情報を思い出すことができずにパスワードリセットを送信するに至ったユーザーは、4割にのぼりました。5人のうち2人がパスワードの再発行を実行しているということです。
パスワードリセットの成功率
リクエストされたリセットのうち、実行されたのは25%未満
そのうち購入まで終えたのは20%以下
一度パスワードリセットした人の75%が二度とトライしなかった
パスワードのリセットを実行した4割ものユーザーが、問題なく再発行を完了できた割合はなんとわずか25%未満。非常に低い数字です。
75%のユーザーは再発行リクエストをしても、メールアドレスが異なっていたり、認証メールが迷惑メールボックスに入ってしまう、などの何らかの理由でうまく再発行の設定をすることができなかったということでしょう。
最終的なコンバージョンでいうと8割以上ものユーザーを、パスワードリセットを経ることで失ってしまうという見方もできます。
パスワードリセットでユーザーを逃さないためには?
パスワードリセットの成功率が非常に低いことからも、まずはユーザーにパスワードの再発行まで至らせないことがベストです。
その対策を講じたうえで、さらにリセットの手順で躓かないようにするような施策を考えていくというアプローチが効果的ではないでしょうか。
次の章からは具体的に可能なアプローチ方法を紹介していきます。
アプローチ1:ログインを支援する
ログインは、出来る限りその場で成功させるに超したことはありません。
そこでユーザーがパスワードを思い出すことができるよう、下記のような工夫で支援するのは有効と考えられます。
ヒントを与える
簡単なヒントを表示するだけで、ユーザーがパスワードを思い出す糸口となる可能性は高いです。
例えば下記のような情報を提示してみましょう。
IDの形式
ログインの項目が「ID」の場合、そのまま「ID」と表示するのは抽象的です。
IDにあたる情報がメールアドレスなのか、ユーザーが登録時任意に設定した文字列を指すのか補足があると良いでしょう。
パスワードの入力形式
パスワードは何文字以上で、数字とアルファベットの組み合わせが必須、なかには大文字や記号が必須、なんていうこともあるでしょう。
パスワードに制約があればあるほど、ユーザーが思い出してくれる可能性が低くなります。ですが逆に、その条件から思い出してくれる可能性もあるわけです。
ぜひヒント代わりにパスワードの入力条件を記載してみてください。
IDの選択肢を増やす
たとえばTwitterのログイン画面では、ユーザー名だけではなく、電話番号やメールアドレスを使ってのログインが可能です。
この形であれば、ユーザ名は思い出せなくても電話番号かアドレスのどれかひとつを思い出せればよいですね。当然、無事ログインできる確率が上がります。
アプローチ2:ログインしなくても利用できるようにする
そもそも、ログインしなくてもサービスを利用できるようになっていれば、パスワードをリセットする必要がありません。
購入フォームや予約フォームなどでは、いわゆる「ゲスト用フォーム」を用意することで、パスワード忘れのユーザーを救出することができます。
上記で取り上げた調査によると、元のログインフォームにゲスト購入機能を搭載したところ、パスワードリセットのリクエストが80%減少したという結果が出ているようです。
ゲスト機能はとくに素早く購入したいユーザーの手を煩わせず、離脱を防いでくれますね。
アプローチ3:ストレスを防止・軽減する
スムーズにログインできないと、当然ユーザーはストレスを感じてしまいます。
そこでイライラから離脱を生むことの無いよう、ストレスを軽減する工夫もしておきたいところです。
エラーの内容を具体的にする
ログイン情報が間違っていた場合でも、そのエラーの内容がその後のログイン成功率を左右します。
単純に「IDとパスワードが一致しません」というエラーでは、ユーザーはどこを修正したら良いかわかりません。
そもそもIDがシステムに存在しないのか、それともIDは問題ないがパスワードだけが違うのか、など、ユーザーの修正の指針となる具体的なエラーメッセージを表示するようにしましょう。
さらにどちらが間違っているかのほかにも、IDやパスワードの入力形式・条件が異なる場合にその旨を知らせる、などエラーがより具体的であればあるほとユーザーが正しいログイン情報を思い出すヒントとなります。
アカウントロックがある場合は事前に告知しよう
フォームのなかには、アカウントのセキュリティ対策のために、一定回数ログインに失敗するとしばらくの間ログインができなくなったり、アカウントを停止されるなどのアカウントロック機能を設けている場合があります。
もちろんこの機能があることでパスワードの総当り攻撃を防ぐことにはなりますが、ユーザー自身が「締め出し」されてしまうリスクがあります。
アカウントロックがある場合は事前にその旨のアラートを表示することで、慎重な入力を促しましょう。
いざロックされてしまった場合でも、事前にその旨がわかっていればストレスも少なく済みます。
アプローチ4:リセットの手順をスムーズに
これまでユーザーにできるだけログイン情報を思い出してもらうための施策を考えてきましたが、どうしても免れない場合もあります。
その場合に備え、リセットの手順は可能な限りスムーズに設計するようにしたいですね。
メールアドレスが特定できない場合の手順も用意する
多くのログインフォームが、パスワードの再発行機能は有しているものも、ID(メールアドレス)忘れに対応する導線を作っていません。
IDが不明である場合向けに、アカウントを特定するための仕組みを用意しておくことがベストではありますが、難しい場合には最低限、ユーザーが次にどのようなアクションをとる必要があるのかを案内するようにはしておきたいです。
例えば、「アカウントIDをお忘れの方はこちらから新規登録してください」「お問い合わせフォームから連絡ください」のような文言をリンクとともに添えておくと良いでしょう。
仮パスワードは送付しない
パスワードの再発行の際、その多くが登録されているメールアドレスに再設定用のURLを送付する形をとっていると思います。
この場合、仮パスワードを送付する形ではなく、パスワードの内容はユーザー自身でその場で設定する形のほうが、その後のパスワード忘れを防ぐ効果が期待できますね。
秘密の質問も有効。ただし新規登録時の項目数は増える
またメールの送信を経ることは、迷惑メールボックスの存在などもあり完璧ではありません。「秘密の質問」などのセキュリティ質問を用意すると、ブラウザで認証を完結させることができます。
(表記ゆれが懸念されるため、ひらがなやアルファベットなどの入力形式に対するヒントがあればなお良いでしょう。)
ただし、もちろんこのような「秘密の質問」を設定するには、新規登録時に必要とする入力内容を増やすことにつながります。
ご担当のフォームにどこまで機能を用意するかは、サイトの規模やサービスの種類によって個別に検討するべきだと思います。
まとめ
いかがだったでしょうか。本日はログイン情報を忘れてしまったリピートユーザーを、サイトから逃さないための施策を数点ご紹介しました。
繰り返しになりますが、まずはできるだけその場ログインを成功させること、次にリセットの手順をスムーズにすることが重要です。
以外と侮れないログインフォーム。まずは簡単にできるヒントの表示など、手軽な内容から改善を進めてみてはいかがでしょうか。