エフ・コードのweb接客ツール「f-tra CTA」のリリースから約1年が経過。
これまで多くのお客様にf-tra CTAをお試し・ご利用いただいてきました。
当ブログでは、この1年間で実施・検証された数え切れないweb接客シナリオの中から、実際に効果のあったお客様の改善事例を紹介していきます。
導入前後の数値としての改善例だけでなく、具体的にどのようなweb接客を実施したのか、又、元々の課題や導入に至った経緯等のキャンペーン設計の背景についても、可能な限り取り上げてまいりたいと思います。
皆様のデジタルマーケティング施策の改善にお役立ちできますと幸いです。
クライアントについて
今回は、あるアパレル系ECサイト(メイン商材は2~5万円の価格帯)の改善事例を取り上げます。
既に多くのデジタルマーケティング施策を実施なさっており、集客の最適化は進んでいる一方、CVR領域での改善を更に進めるべくweb接客ツールを試したい、というのがf-tra CTA導入に至った背景でした。
課題
先述の通り、既に一通りのデジタルマーケティング施策にはお取り組みでしたが、CPA成果の見合う施策が一部のリスティング施策や動的リターゲティング施策に偏っており、既存顧客の刈り取りが中心、現行のCPAを守りながら新規獲得へ拡大することが難しく、いつか成果が細ってしまう可能性があるのでは、という課題をお持ちでした。
アクセス解析でも、同様に、下記のような課題が浮き彫りとなっていました。
課題①新規訪問ユーザーが購買までに要する訪問回数が多く、既存顧客に比べ購買率が著しく低い
通常のEC事業者と比較しても、新規訪問ユーザーのコンバージョン率が著しく低い傾向があり、意思決定まで相当長期を要するという大きな課題がありました。
課題②サイト導線では、かご落ちが多く、購買途中での逡巡が見られる
特に新規訪問のユーザーで、かご落ち、つまり、一旦商品をカートに入れたものの、購入せずに離脱してしまうユーザーが多いという顕著な傾向がありました。
想定されるユーザー体験
メイン商材は比較的高価であり、またアパレルという商材柄、サイジングが重要であること、またアクセス解析の結果からも、ユーザー像およびユーザー体験に関する仮説は下記の通りとなりました。
EC利用に伴う直感的不安
比較的高価格帯に位置するアパレル商材をECで購入することに対し、潜在的、直感的な不安があり、初回購入までのハードルが高いのではないか。例えばユーザーは、特にサイズなどについて、実店舗で体型に合ったものを仕立てるか、サイズを見立ててもらったことしかなく、自分のサイズをよく把握していない。そのため、間違ったサイズを買ってしまう不安感が購入を躊躇わせる。このようなユーザーの姿が想定されます。
商材が独特の商品知識を前提としており、ユーザーにとって難しい
商品の特性上、自分のサイズは把握していても、商品にいくつかのブランドカテゴリが存在し、それぞれサイズ感が異なるため、どれを選んでよいかわからない。あるいは、デザインや素材などの他の要素も検討に含まれ、比較検討しにくく、購入をあきらめてしまう。ブランドが高価格であればあるほど、独特の近寄りがたさをユーザーに思わせてしまうのではないかと考えられます。
web接客シナリオ設計のポイント
上記のユーザーストーリーから、web接客のねらいは大きく下記の2点となりました。
ユーザーを不安にさせる要素を軽減。気楽に商品を手に取れるように。
ユーザーを不安にさせる最大の要素として、「サイズが合うか分からないまま高価なものを買うのは怖い」という心理があると想定し、CTAで
- 自分のサイズを簡単に把握することができるコンテンツを用意し、購入初心者の心理的ハードルを下げる
- 各商品カテゴリ(ブランド)のサイズ表を見やすくかつアクセスしやすい箇所に表記し、商品を比較検討しやすくする。
などの施策を実施しました。
一度商品を手に取っていただいたら、購入意欲を後押し、カートをスムーズに通過していただく
カートに商品を追加した後には、スムーズに購入まで進んでいただくことが重要。具体的には「お得感」「限定感」の訴求が有効と考えられますが、特別な値引き施策の実施はすぐには困難であったため、元々存在するサービスである「送料無料」をあらためてユーザーへ訴求することで、カート離脱を思いとどまらせることを試みました。
実際に運用したキャンペーンは下記の通りです。
CTAキャンペーン実例1 :ユーザーの不安を取り除くーサイジング訴求ー
ターゲティング設定
・該当の商品カテゴリ(ブランド)の商品ページすべて
そのカテゴリに合ったサイズ情報を表示するように商品ページをセグメント。
まずは代表的な2種類のカテゴリ(以降カテゴリA、Bとします)にて検証を実施。
・対象デバイス
まずは画面が大きくリスクの少ないPCから検証開始。
クリエイティブ
バナー構成要素:
・身長とウェストから適切なサイズが探せる一覧表を表示。
・クリックするとそのカテゴリのサイズ表が展開され、商品詳細とサイズ表を同画面内で閲覧することができ、利便性を向上させる。
・必要に応じて展開できるよう、ウィンドウ右下に小ぶりなポップアップを表示。
CTAキャンペーン実例2: 購入意欲後押しーカート落ち対策ー
ターゲティング設定
・カートページのみに表示。
・PCとSP両方で実施。
クリエイティブ
バナーイメージ:
・カートページ訪問時に、ウィンドウ右下にスクエアバナーをポップアップ表示。ただページ内に文言を記載するだけの場合に比べ、アニメーションを伴って表示させることでより注目度を高めることができると考えられる。
・サイトが全体として寒色系の配色であったため、反対色をあしらい、文字も大きくしインパクトのある訴求になるように構成。
・目的は送料無料を訴求することなので、リンク先の設定はせず、クリックするとバナーが閉じられるように。
運用結果
両キャンペーンの運用結果は、下記のとおりとなりました。
いずれも検証期間は1週間、ONOFFのABテスト形式(※)で運用しました。
(※50%のユーザーにはweb接客が実施され、残る50%には実施されないというテスト)
まずはサイジングの不安を取り除くキャンペーン1です。
キャンペーン実例1の結果
カテゴリA | カテゴリB | |
---|---|---|
CTAによる改善幅 (接客実施時CVR÷接客未実施CVR) |
306% | 229% |
このキャンペーンでは、検証を行った2つのカテゴリのいずれにおいても大きな改善効果を確認できました。
サイズ表を配置するだけでも効果があることから、更に改善を進め、自分のサイズを把握できていない人でも取り組んでもらいやすい文言を用いる等し、購入初心者に寄り添ったコンテンツを準備したり、よりサイズ感をイメージしやすくする工夫を実施することで、さらに改善を進められると考えられます。
キャンペーン実例2の結果
続いて、かご落ちを防ぐキャンペーン2の運用結果です。
PC | スマートフォン | |
---|---|---|
CTAによる改善幅 (接客実施後CVR÷接客未実施CVR) |
96.8% | 105% |
このキャンペーンでは、どちらのデバイスにおいても大きな改善効果を確認することはできませんでした。
「送料無料」という訴求内容は、カート離脱を抑止するには弱い可能性があります。
特に、現在のように、有力な通販サイトで送料無料サービスの恒常化している状態では、ユーザーにとっては「無料で当然」という感覚があるかもしれず、ユーザーの心理を後押しする効果の期待できない可能性が考えられます。
そのため、異なる訴求内容、とくに「期間限定」など、「今」購入するために強くユーザーの感情を揺さぶるキャンペーンであれば、より効果が見込めるという仮説が考えられます。
以上、アパレル系ECサイトのエフトラCTA改善事例の紹介でした。
今後も定期的に改善事例を紹介していきますので、お楽しみにお待ち下さい。