弊社web接客ツール「f-traCTA」の改善事例紹介、第2回目はベビー用品を扱うECサイトを取り上げます。
クライアントについて
この顧客はベビー用品の製造・販売を行うメーカーで、ベビー用品を扱うECサイトを運営されています。取り扱う商品の種類が非常に豊富で、多数の会員を抱える大規模なECサイトです。
課題
導入前のサイトには、下記の課題やご要望がありました。
サイト全体の課題
- 会員数が多く、かつリピート訪問者の割合が多いため、サイトにお気に入りや購入履歴によるレコメンド・ポイント制度などの会員向けの機能やコンテンツを豊富に用意しているものの、多数の既会員ユーザーがログインすることなくサイトを周遊してしまい、それらが機能していない
- 特に開発に力を入れている主力商品を購入してもらいたい
改善したい成果指標
- トップページの直帰率が高い
- かご落ち、つまり、一旦商品をカートに入れたものの、購入しないユーザーが多い
- リピートユーザーの購入率をさらに高める施策を検討したい
想定されるユーザー体験
そこで、ユーザー体験に関する仮説を下記のとおりに設定しました。
ログインは買いたいものが見つかってからで良い
以前にサイトを利用したことがあり、新しく欲しいものがあるなど買い物をする意思があってサイトに訪れている。商品を探すことが最優先であり、ログインするのはいざ欲しいものが見つかってからで良いと考えている。
商品が多いため、どこから見はじめてよいかわからない
サイトは掲載商品の種類が膨大であり、トップページの情報量が多い傾向にある。多すぎる選択肢がユーザーの心理的負担になってしまっている。さらに検索軸も多く存在し、どのように商品を探しはじめてよいか迷ったり、膨大な数のなかから目的の商品を探し出す行為そのものを面倒に感じてしまう。結果として、トップページから即離脱してしまう。
閲覧が途切れ途切れで、そのまま忘れてしまう
いくつか欲しい商品があり、購入するつもりでカートに追加している。ただ、ユーザーは細切れの時間の中でサイトを閲覧しており、一旦閲覧を中断した時点で購入の優先度が下がってしまうか、忘れてしまう。
緊急度が低いので今買わなくても良い
サイトを利用したことがあり、商品にも満足し、また利用したいと考えてはいる。ほしい商品もいくつか見つけているが、必ずしも今すぐ必要ではないので購入に至らない。もしセールになっていれば買いたいので様子を見ているユーザーもいる。
web接客シナリオ設計のポイント
上記のユーザーストーリーの仮設から、CTAキャンペーンの狙いは下記の通りとなりました。
商品探しの段階でログインする必要性を感じてもらう
サイトが元々持つ機能のひとつに、一部の商品に会員向けのディスカウントがあり、ログインすることでその割引価格を確認することができる、というものがありました。これをユーザーにログインしてもらうための動機づけに利用することができると考えました。
しかし、会員価格が存在する商品は全体のごく一部であることと、会員価格の表記を確認するための導線がなく、現状ユーザーがこの表記を発見するためにはたまたま該当の商品を表示するか、検索軸の絞り込み条件を操作する必要があり、発見が困難な状況にありました。
この階層が深く隠れてしまっている商品の一覧をf-tra CTAのバナーのリンク先にすることで、多くのユーザーにログインという行動をもたらし、間接的に購入率の向上に寄与することができるのではと考えました。
キラーコンテンツへの誘導
ユーザーがまず商品を探しはじめることへのハードルを下げるためには、ランディングページの情報に強弱をつけ、最初にどのページを見ればよいかを誘導する施策が有効です。
もともとトップページには、主力商品や人気商品に目を留めてもらいやすいように、人気ランキングという形で商品単位でのピックアップ施策は実施していましたが、個別商品をフィーチャーしてしまうと具体性が強すぎ、かえって選ぶポイントがわかりにくくなってしまう可能性もあります。
最も順当な商品の探し方は、まずはカテゴリトップページに移動し、そこからユーザーの必要性や好みに応じて商品を選んでもらう、という回遊の方法。つまりトップページから主力のカテゴリ一覧への誘導を強めることで、ユーザーが買い物を続けやすくするのではと考えました。
サイトから離脱する前に購入を促す
ユーザーがサイトの閲覧を中断してしまうのはやむを得ないため、ユーザーが再びデバイスを手にした時にいかに購入を再開してもらうか、という点が重要です。最終的にブラウザのタブを消すなどのサイトからの離脱する行動を起こしたタイミングで、カートに入れた商品のことを思い出してもらうという施策が有効ではないかと考えました。離脱をトリガーにしておくことで、あとで再度閲覧しようと残しておいたタブを操作をミスで消してしまった、という場合にもf-tra CTAを表示することができます。
そして、実際に運用したキャンペーンとその結果は下記のとおりです。いずれも検証期間は1ヶ月間、CVは購入となります。
f-tra CTAキャンペーン実例1:ログインを促進
ターゲティング設定
・サイトの全てのURLが対象
・5PVしたユーザー(=ログインせずにある程度サイトを回遊しているユーザー)に対し、ページロード2秒後にバナーを表示
・同セッション内で1回以上表示しない
・全商品ECサイトにて実施
クリエイティブ
バナーイメージ:
・ログインすることで割引後の価格が確認出来るメリットをユーザーに訴求
・クリックすると、アクセスし難い所にあった会員限定価格を持つ商品一覧に遷移する
・必要に応じて利用できるよう、邪魔になりにくいウィンドウ左下にポップアップを展開。
運用結果
PC | SP | |
---|---|---|
f-tra CTAによるCVR増加幅 | +0.05% | +0.38% |
このキャンペーンでは、特にSPで改善効果を確認することができました。
まずログインを誘導することは、会員独自のコンテンツを享受できるほか、欲しい商品を見つけてからの購入フローがスムーズになるというメリットもあり、結果として購入率の向上につながるというシナリオが十分に期待できます。
今後はログイン率等のKPIも計測しつつ、さらなる効果検証を進める余地を感じます。
CTAキャンペーン実例2: 3大商品の訴求
ターゲティング設定
・すべてのページが対象
・0~2PVした(=サイトを訪れて間もない)ユーザーに対し、ページロード2秒後にバナーを表示
・全商品ECサイトにて実施
クリエイティブ
バナーイメージ:
・3つの主力商品カテゴリへのリンクを配置。それぞれクリックするとそのカテゴリのトップに遷移する
・ページ訪問時に、ウィンドウ右下にスクエアバナーをポップアップ表示。ただページ内に文言を記載するだけの場合に比べ、アニメーションを伴って表示させることでより注目度を高めることができると考えられる。
・サイト回遊中、必要に応じて利用できるよう、邪魔になりにくいウィンドウ左下にポップアップを展開。
運用結果
PC | SP | |
---|---|---|
CTAによるCVR改善幅 | -0.05% | +0.02% |
どちらのデバイスにおいても、このキャンペーンの有無による明確な差異を確認することはできませんでした。
リンク先のカテゴリトップページは、カテゴリ別に商品が絞られているとはいえ、商品数にはまだまだボリュームがあり、ユーザーの心理的負担を軽減するにはいたらなかった可能性があります。
カテゴリトップよりもさらに情報を絞ったページを用意し、ユーザーに回遊してもらいやすくするキャンペーンを実施することが次の検証の一手となりそうです。
CTAキャンペーン実例3: 直帰率の改善
ターゲティング設定
・TOPページにのみ表示
・ページロード3秒後に、画面下部にバナーを表示
・ウェアECサイトにて実施
クリエイティブ
バナーイメージ:
・今シーズンの新作商品カタログのダウンロードを誘導
・新作商品のページでは、カタログをダウンロードして、より詳しい商品の情報を確認することができる
・ページ訪問直後に、ウィンドウ下部にを横長のポップアップバナーを表示。アニメーションを伴って表示させることでより注目度を高めることができると考えられる
運用結果
PC | SP | |
---|---|---|
CTAによるCVR増加幅 | +0.62% | +0.02% |
このキャンペーンでは、特にPCにおいて大きな改善効果を確認できました。
季節の最新ラインナップというコンテンツの魅力に加え、ページの商品点数もほどよく、その後のサイトの回遊への導入として機能している可能性があります。
今回はダウンロードを訴求するクリエイティブとしましたが、訴求の切り口を複数用意して検証することで、さらに改善効果を高めることが期待できます。
CTAキャンペーン実例4: カート離脱の改善
ターゲティング設定
・全ページが対象
・cookieターゲティング機能を利用し、カートに商品が入っているユーザーのみをセグメント
・ページ離脱時にバナーを表示
クリエイティブ
バナーイメージ:
・カゴ落ちユーザーに対し、買い忘れがないかどうかの訴求を実施
・モーダルウィンドウというインパクトの強いUIを用いて実施
・リンク先はカートページ
運用結果
PC | SP | |
---|---|---|
CTAによるCVR増加幅 | +0.34% | -0.51% |
このキャンペーンでは、PCでは改善効果が出た一方、デバイスによって明暗が分かれる結果となりました。
今回のクリエイティブは、ストレートに買い忘れがないかどうかを訴えかける内容でしたが、離脱する多くのユーザーはかごに入れた商品があることを忘れているわけではなく、これが訴求として機能していないということが考えられます。
より強くユーザーの感情に訴え、「今」買わなくてはならない理由をユーザーに提示するような別の訴求の切り口が必要なのではないでしょうか。
CTAキャンペーン実例5: リピート購入率の改善
ターゲティング設定
・全てのページが対象
・cookieターゲティング機能を利用し、ログイン済ユーザーのうち、所持ポイント数が1,000を超えているユーザーを選別
・ページロード5秒後にバナーを表示
クリエイティブ
バナーイメージ:
・ポイントを1000ポイント以上持っているユーザーに対し、所持ポイントを訴求
・アクションはポイント残高を確認できるマイページに遷移するか、そのままバナーを閉じるかの2種類を用意
運用結果
PC | SP | |
---|---|---|
CTAによるCVR改善幅 | +1.32% | -0.49% |
PCでは1%以上も改善効果が見られ、十分にバナーが購入を後押ししてると言えそうです。
一方スマートフォンではSPは改善効果はわずかにマイナスに。ただし画面の小さいスマートフォンではバナーそのものがユーザーの負担となりやすいため、表示タイミングや大きさ等をチューニングするだけでも結果に影響する可能性があります。引き続き調整を進めてみるのが良さそうです。
まとめ
以上、ベビー用品ECサイトのf-traCTA改善事例の紹介でした。
今回は5つのキャンペーンを同時に実施しましたが、デバイスごとの効果差が顕著に現れました。
PCではユーザーも購入成功の高い状態で流入してくるのに対し、
スマートフォンではまだ購入よりも情報収集が目的である等、異なる遡及が有効である可能性があります。
UI改善の世界では、最初から仮説どおりに検証が進むことのほうが稀。
このようにして得られた結果を基に、地道な検証を重ねることこそが成功の鍵です。
皆様のPDCAサイクルに少しでも役立てるよう、エフ・コードでは今後もf-traCTAの改善事例を紹介していきます。