購入フォームや予約フォームを利用する際、手続きに入る前に会員登録を済ませなくてはならず、うんざりした経験はお持ちでしょうか。
事実、2014年の調査によると、じつに23%のユーザーが、「ユーザーアカウントを登録する必要があったこと」をカート離脱の理由として挙げているそうです。
本日は、購入や予約のフォームに会員登録を挟むことが、ユーザービリティに与える影響や解決策について考察してみたいと思います。
会員登録を挟む理由
多くのユーザーを離脱へ導いてしまっている購入前の会員登録。そもそも、どうして多くの購入フォームで実装されているのでしょうか。
リピートユーザーのため
例えばECサイトの代表格Amazonでも、購入の前に会員登録を強制させる形をとっています。
Amazonでは非常に多岐にわたるジャンルの商品を扱っていることからも頻繁に利用するユーザーが多く、会員登録で個人情報を保存しておくことで、2回目以降の購入の手間をうんと省くことができるようになります。
特に同じPCの同じブラウザしか利用しないユーザーであれば、いったんログイン情報を保存しておけばどんなときでもわずかなクリック数で購入を完了させることが可能となり、非常にスムーズです。
同様に多くのサイトが、リピート利用時の決済等をスムーズにするために会員登録機能を設けていると考えられます。
データ取得のため
リピートユーザー向けのユーザビリティ観点以外にも、購入履歴から関連商品をレコメンドしたり、ニュースレター等の送付など、マーケティング観点で顧客のデータを取得しておきたい場合もあるでしょう。
なぜユーザーにとってストレスなのか
続いて、なぜ購入や予約前の会員登録/ログインに対してユーザーがストレスを感じるのかということについて整理しておきましょう。
納得感がない
必要性をユーザーに感じてもらえるかという問題です。
Amazonのような巨大なECサイトであればともかく、初めて利用するECサイトを、その後リピート利用するかどうかに確信を持てるユーザーは少ないと思います。
例えば、上に例として上げた東京ディズニーリゾートのチケット購入画面。ディズニーファンで何度も施設に足を運ぶようなユーザーにとっては、メンバー登録は嬉しい機能ですが、
そうではない人にとっては、繰り返し使うとは限らないのにという違和感があります。なかには登録を強制されているように感じる人もいるかもしれません。
とくに、フォームで迅速に目的の商品を購入したいユーザーにとっては、会員登録というステップが煩わしく、納得感を感じてもらえるかが難しそうです。
極力個人情報を登録したくない
極力、自分の個人登録をしたくないというユーザーもいます。
以前に会員登録によって配信されたニュースレターやセールスを受けた経験により、(実際にそのサイトがセールスを実施しなかったとしても)会員登録そのものに警戒心を感じているユーザーもいるでしょう。
会員登録がゲートとなることで、そのようなユーザーの利用を遠ざけてしまう可能性は大きいでしょう。
単純に画面遷移と項目数が多くなる
会員登録のためには、単純に入力する情報量や画面遷移が多くなる場合があります。
手間が増えるというのもユーザーが面倒に感じるポイントです。
とくに、会員登録後にログインページが再度表示されるタイプのフォームでは、ユーザーが二度手間に感じたり、振り出しに戻ったように捉えてしまうこともあるでしょう。
登録の有無やログイン情報を忘れた
リピートユーザーの利便性を考えて作られていることの多い会員機能ですが、必ずしもリピートユーザーにとって優しいとは限りません。
登録したとしても、そのことを忘れていたり、もしくはIDやパスワードなどのログイン情報を忘れてしまうユーザーが多いからです。
例えばある大手Eコマースサイトの調査では、下記のような結果が明らかとなっています。
- ユーザーの45%が複数回(多くて10回もの)会員登録を実行している
- ユーザーの約40%はパスワード再発行をリクエストした
このサイトの調査では45%のユーザーが、既に会員登録したことを忘れて同じ情報での登録をリクエストしています。
また、4割ものユーザーがログイン情報を思い出すことができなかったようです。
スムーズにログインできず、パスワードを再発行しなければならないのは非常に面倒ですし、ストレスを感じますね。
パスワード再発行が複雑
さらにパスワードリセットをリクエストした場合も、認証用メール(迷惑フォルダに入っている場合もある)を確認する必要があったり、新しいパスワードを再設定したりなど、多くの場合そのプロセスは複雑です。
上記の調査では、下記のことも判明しています。
- リクエストされたパスワード再発行のうち、実行されたのは25%未満
- そのうち購入まで終えたのは20%以下
- 一度パスワード再発行した人の75%が二度とトライしなかった
事例のひとつには過ぎませんが、再発行リクエストをしてもうまく設定をすることができなかったか、途中であきらめてしまった人は75%にのぼるというのはたいへん驚くべき数字です。
まとめ:実際にはあまりユーザーの役に立っていない可能性
ここまで、ユーザーが会員登録をストレスに感じる可能性を挙げてきましたが、新規利用の場合はともかく、リピート購入の場合もユーザーにストレスを与えてしまっている場合があり、実際には想定しているほど大きくユーザーの役に立っていない会員登録機能は多いのかもしれません。
どうしたらいいのか
それでは、フォームをどのように改善すれば良いのでしょうか。幾つかのアイデアが考えられます。
登録を任意にする ※推奨
ログイン情報忘れなどの課題はあるものの、繰り返し利用するユーザーにとって情報を保存しておく会員機能は必要です。
そういったメリットとフォームのユーザビリティをうまく共存させるためには、単純なことですが会員登録をオプションとして用意するという方法が考えられます。
登録を強制せず、必要に応じて利用できること。利用はあくまでユーザーの意思に委ねるという点が重要です。
具体的には、下記のような例を参考にしてみてください。
1. ゲスト購入の選択肢を用意する
ゲスト購入用の入り口を用意する方法です。
会員機能が必要ないと感じたユーザーは、あらかじめゲスト購入者用のリンクからフォームに進むことができます。
2. 会員登録をオプション項目として見せる
入り口は分けず、フォーム内のオプション項目として選択肢を用意する方法もあります。この場合、振り分けのための遷移も省略することができます。
たとえば楽天の購入フォームでは、新規会員登録とゲスト購入、会員ログインが同じページに共存しています。
ジェットスターのフォームでは、会員ログインおよび登録がフォーム遷移の途中で登場し、必要に応じて新規登録したり、登録済みの内容を呼び出す仕組みになっています。
3. 完了ページで案内する
完了ページで送信済みの情報を保存しておくかどうかのオプションを案内する形も考えられます。1や2と併用しても良いでしょう。
完了ページにいるユーザーは当然ながら、すでに会員登録に必用な情報はほとんど入力し終えています。(追加で必要なのはパスワードの設定程度でしょう)
ほんの少しの手間で登録を完了できますので、かなり登録のハードルは低くなります。
また、完了ページには、会員登録することのメリットを充分に提示できる物理的なスペースがあるという利点も。
ポイントや割引などの会員特典を訴求して登録につなげるとよいでしょう。
ソーシャルログイン、または最低限の項目に留める
会員登録をどうしても外せない場合、登録にかかる手間をできるだけ最低限に留めるというアプローチも有効かと思います。
登録時点での必須項目を最低限の数に抑えることや、facebookやtwitter、YahooIDなど広く使われているWEBサービスのアカウントを使った会員登録機能があれば、簡単に登録が完了できるほか、使い慣れたアカウントであればログイン情報を忘れてしまうリスクも低いことでしょう。
もちろん、すべてのユーザーがこれらのアカウントを持っているとは限りませんので、必ず通常の登録フローも用意するようにしたいですね。
改善事例
ある改善事例では、会員登録のフローを削除しゲスト購入機能を設けたことでなんと45%もの改善効果、年間で3億ドルもの売上の増加があったようです。
※詳しくは下記の記事で取り上げておりますのでご覧ください。
3億ドルのボタン~45%もの改善効果をもたらした、たったひとつの施策~
https://f-tra.jp/blog/overseas/5698
事例のひとつには過ぎませんが、ゲスト購入機能の有無でこれほど改善効果があるというのは非常に驚異的な数字ですね。
逆に、会員登録が必須のフォームは、現在のコンバージョンの45%分をつねに逃してきたとも見ることができます。
あなたのフォームもたくさんのユーザーを逃しているかもしれません…。
最後に
いかがだったでしょうか。本日は購入フォームでのゲスト購入が必須である理由についてお伝えしました。
購入や予約のフォームで会員登録が必須の場合、ユーザビリティを損なっている可能性があることがお分かりいただけたのではと思います。
あなたのフォームは登録必須ではないですか?もしかすると、ユーザーの意思に応じて登録できるフローに改善すれば、大幅な成績アップにつながるかもしれません。ぜひ、改善を検討いただければ幸いです。